建設業における人手不足の現状と将来予測から今後の対策を考える

求人・採用

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ここ数年、労働者人口の減少により、建設業以外も多くの業界で人手不足が起きています。
その中でもとりわけ、建設業における職人の人手不足は厳しく、2018年5月の「建設の職業」の有効求人倍率は4.23倍になっています。これは、全職種平均の1.33倍をおおきく上回っています。

なぜ、建設業ではこれほどまでの職人の人手不足がおきているのでしょうか?
職人の人手不足の現状・原因から、将来予測と対策について、行政が公表している最新の数値情報を含めて整理しました。

建設業における職人の人手不足の現状

建設業といっても、建設業はおおきく総合建設業と職種別建設業の2つに分けられます。
ここでは、職種別建設業について取り上げます。

また、職種によって人手不足の度合いが違うため、施工管理者は含まず、あくまで技術労働者である職人の人手不足を対象にします。ただ、職人といっても、型わく工、土工、左官、とび工、鉄筋工、解体工、電工、配管工、グラウト工などたくさんの職種があり、職種によっても人手不足の度合いは変わってきます。

まず最初に、どのくらい職人の人手不足がおきているか具体的な数値で確認していきます。

建設業における職人の人手不足の調査結果

2018年6月25日に公表された国土交通省の「建設労働需給調査結果(平成30年5月調査)に次の記載があります。

1.全国の8職種の過不足率は、4月は0.3%の不足、5月は0.8%の不足となり、0.5ポイント不足幅が拡大した。
2. 東北地域の8職種の過不足率は、4月は0.0%(均衡)、5月は1.0%の不足となり、1.0ポイント不足幅が拡大した。
3.全職種で不足となっており、型わく工(建築)及び鉄筋工(建築)の不足率1.5%が最も大きい。
4.北海道で過剰、中部で均衡、その他の地域で不足傾向となっている。
5.翌々月(7月)における労働者の確保に関する見通しは、「困難」と「やや困難」の合計が22.8%で、対前年同月(19.6%)比3.2ポイントの上昇となっている。

地域によって異なるものの、全体としては人手不足の傾向にあること、今後の職人確保に対する不安が高まっていることがわかります。
また、型わく工と鉄筋工という建設の中でも最初の工程を担当する職種の人手不足率が高いことが分かります。

しかし、この人手不足率、数値だけ見てもいまいちイメージがしづらいと思います。1.0%の不足といっても、ピンときませんよね。

不足率は、(確保したかったが出来なかった労働者-確保したが過剰となった労働者数)÷(確保している労働者数+確保したかったが出来なかった労働者数)×100で求められるとあります。

数式に具体的な数値を入れて考えてみます。調査対象地域で確保している労働者が10,000名、確保したかったが出来なかった労働者数が1,000名、確保したが過剰となった労働者数が890名とします。

数式にあてはめると、(1,000-890)÷(10,000+1000)×100=1%となります。1.0%の不足となると、こんな感じです。もっと職人が不足しているイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。

この調査は毎月行われています。最新の情報を知りたい場合は、国土交通省のオープンデータからご確認ください。

建設業における職人就業者数の推移

2017年10月31日に公表された厚生労働省の労働市場分析レポート第81号「建設業における若年労働者確保の課題について」の「図1 建設業投資額と建設業就業者数の推移」からの引用です。

水色の某グラフ、技能労働就業者数がいわゆる職人の就業者数です。
平成18年からほぼ右肩下がりで職人の数が減っているのが分かります。

とはいえ、そこまで急激に減っているわけではありません。近年では、建設業の職人は若い人に人気がない職種のため、若い職人が増えずもっと就業者数が減っているイメージの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのイメージは間違っていません。実際、若手職人の人手不足は進み、職人の高年齢化が顕著になっています。

建設業における若手職人の人手不足と高年齢化

厚生労働省の同じ資料の「図2 就業者に占める若年層・高年齢層の割合の推移」からの引用です。

全産業の29歳以下の割合が平成28年で16.4%に対して、建設業は11.4%しかありません。平成25年の10.2%より少しだけよくなっているとはいえ、若い人から人気がなく、若年職人の人手不足がわかります。

一方、55歳以上の高年齢層は、全産業が29.3%に対して、建設業は33.9%。職人は肉体労働であるにもかかわらず、全産業よりも4%も高いです。

建設業における職種別の職人年齢構成の特徴

全ての職種で若手職人の人手不足がおきているかというと、そうではありません。先ほどの「建設労働需給調査結果(平成30年5月調査)では、型わく工と鉄筋工が不足しているというデータでした。

別のデータである、総務省の2010年国勢調査のデータをもとに算出すると、また違った結果をみることができます。行政の調査は、調査対象期間や調査対象が異なるため、大きな方向性はおなじでも、細かいところをみると違った結果になることがあります。

職人の人手不足の現状を知る観点に立てば、まずは、大きな方向性を理解することです。そのうえで、個別職種の人手不足の状況については、さまざまな調査結果をみて該当する記載があれば、職人の人手不足の状況があると考えた方がよいです。

図から読み取れる内容としては、とび職は34歳以下の職人が建設業の平均よりも多くなっています。実際、とび職は建設業の職種の中では若い人に人気があります。

一方、左官と大工は、49歳以下の職人が建設業の平均より少なく、55歳~74歳の職人が平均よりかなり多くなっています。これは、かなりいびつな構成です。

とび職以外は、基本的に高年齢化が進んでいます。左官や大工はもちろんですが、とび職以外の職種は、目先の職人の人手不足を解消するだけでなく、15年後20年後を考えて若手の職人を採用することが大切です。

職人の人手不足を原因とする建設業の人手不足倒産

職人の人手不足が原因で、せっかく仕事の引き合いがあっても断らないといけない、という話はよく聞きます。他にも、なんとか人手を確保するために、単価を少し上乗せして協力会社に依頼する。そのため、外注費が高くなって利益が少なくなってしまう、ということも聞きます。

こうした状態が続くと、売上が減り、利益が減るため、最悪、倒産してしまうリスクがあります。実際、そのようなケースはどのくらいあるのでしょうか。

2018年4月29日に帝国データバンクから2017年度の人手不足倒産の動向調査が発表されました。

2017年度の人手不足倒産は114件。4年連続で前年度を上回り、年度合計で初めて100件を超え、この5年間で2.5倍に増えたということです。

業種別件数で見ると、2017年度は建設業が最多の31件。直近5年間の累計の業種細分類別では、木造建築が2位で21件となっています。

業種別13年度14年度15年度16年度17年度5年間累計
建設業1436252331129
合計45656879114371

建設業における職人の人手不足の将来予測

職人不足を原因とする倒産が今後も増えて行くでしょうか?
それは、建設業が若手職人の人手不足を解消できるか、にかかってきます。

一般社団法人日本建設業連合会が発表した資料によると、2025年には2014年から128万人が減少する、と推計しています。また、2025年度までの目標として、生産性向上による省人化で35万人分、新規入職者を90万人増やすとしています。新規入職者は、34歳以下の若者を中心に90万人、うち女性を20万人以上としています。

職人の人材確保における課題

新規学卒者の建設業への入職状況

若手職人の人手不足への対策としては、新規学卒者を採用していくことが大切になります。

平成28年2月に国土交通省が公表した「最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について」の新規学卒者の建設業への入職状況を引用します。

平成21年に底をうって、新規学卒者の入職が増えていることが分かります。
これは行政も一緒になって、職人の労働環境の改善をおこなって、少しずつ効果が出ているためだと推測されます。とはいえ、まだまだ労働環境の改善が必要で、引き続き行政主導で建設業界を変えていって欲しいところです。

この事実から、工夫次第で新規学卒者を採用することは、数年前までと比べれば出来やすいということです。

若手職人の人材採用における課題

新規学卒者を採用できる可能性があるのは分かったとして、気がかりなことは「すぐに辞められないか?」ということでしょう。やはり入社する以上、少しでも長く働いてもらいたいですから。

同じく国土交通省の「最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について」から、さらに2つ資料を引用します。

1つ目は若手職人が定着しない原因、もう1つは定着させるための取組みです。求人に応募するときに、不安に思ったまま採用され、結局、数カ月とか1、2年で退職されてしまうことが、しばしばあるでしょう。

どんな取組みをすることが早期離職を減らすのに効果的なのかが分かれば、社内の制度を整備して対応することができます。


女性職人採用における課題

職人でもいかに女性を採用していくかは、職人に限らず、日本社会において大きな課題です。

労働力人口の急激な減少に伴う人手不足を解決するには、国内であれば女性の雇用、国外であれば外国人の雇用、この2つで補っていくほかありません。とはいえ、建設業、しかも職人で考えると、どうしても女性を雇用するのは難しいと考える会社が多いのが事実です。

同じく国土交通省の「最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について」から2つ資料を引用します。

1つ目は女性活躍を推進する上での問題や課題です。
建設業の職人という性質上、「そうそううちも同じだ」と思う問題や課題が多くならんでいるのではないでしょうか。

一方で、会社がきちんと対応すれば、コストをかけることなく実現できることも含まれていることに気付くはずです。

続いて、上記の問題や課題を解決するのに効果的だと思う取組みです。

ざっと眺めるだけだと、たしかにやったら効果的かもしれないけど、実際にやれるかというと難しいかな、、、と思う方もいらっしゃるでしょう。そんな場合は、「なぜそう思うのか?」「なぜやれないと思うのか?」をとことん突き詰めて考えてみるとよいです。実際に導入している会社もある訳ですから。

職人不足を解消するためにやるべき対策

応募にあたっての不安や悩みの解消

若手職人の人材採用の課題と女性職人採用の課題に挙げられているように、採用にあたってさまざまな課題があります。それは、応募する側からみると、本当に応募して大丈夫か?採用されてもちゃんと働いていけるか?といった不安や悩みになります。

不安や悩み、心配があれば応募はしづらくなります。

まずは、あなたの会社の人材募集について、求職者側の立場になって考えてみましょう。どんな不安や悩みを感じるでしょうか?その不安や悩みが、うちの会社なら問題ないよ!と言えるでしょうか?言えるなら、その理由は何でしょうか?

残念ながら、うちの会社だと解消できない不安や心配が多くなってしまうな、、、と思った方もいるでしょう。その場合は、解消するために何ができるか考えましょう。課題にあった「職人の人間関係をよくする」だったら、飲み会やBBQなどのイベントを会社で積極的に開催する。「技能教育の推進、資格取得の支援」だったら、昔ながらの見て覚えろではなくて、社内での研修や現場にいく先輩との組み合わせ方を考慮するとか、資格取得費用に一部を会社が負担するとか、何かできるはずです。

女性の職人であれば、女性が体力面で問題なくできる仕事は何か?体力が必要な仕事は男性職人がやるなら、どのような現場の体制にすれば可能か?時間外労働をさせにくいなら、あらかじめ元請けやお客さんに相談できないか?考えてみてください。特に女性職人の採用は、やったことがないだけに、求人する側も分からないことによる無用な不安を感じているケースがあります。

職人の求人募集で自社の取組みを伝える工夫

職人が応募にあたって抱えている不安や悩みを解消できる仕組みを会社に作っても、それを見てもらえなければ意味がありません。せっかく良い仕組みや制度を作ってもそれを伝えずに、募集要項だけしか見せていない会社も多くあります。

募集要項にのっている情報だけだと、給与や福利厚生に目がいってしまって、人材確保につながりません。待遇面を改善する努力も必要ですが、それ以上に、あなたの会社が職人を大切にする会社、職人が働きやすい環境を作っている会社であることを伝えることが大切です。

今の時代であれば、ホームページ、FacebookなどのSNSなどを活用することで簡単に情報を発信できます。採用面接で質問されたら答える、というスタンスは止めましょう。採用面接に来てもらう、求人募集に応募をしてもらうために、求人企業側が積極的に情報を発信していくことが、人材不足解消の第一歩です。

最新の行政の取組み

平成30年度の国土交通省と厚生労働省の建設事業者向けの施策を、最後に確認します。

両省が連携を図りながら、魅力ある職場づくり、人材育成、人材確保の取組みをするための予算を講じています。業界全体としての悪いイメージの払しょくに繋がっていくことが期待できますので、業界や職人という職種自体が人気がないからという理由に逃げることなく、むしろ行政と一体となって建設業界を盛り上げていくんだ!くらいのメッセージを求職者に発信できると良いですね。

また、職人の人手確保、入社後の育成、働きやすい職場づくりにあたっては、それを実現するために使える補助金や助成金がいろいろあります。職人の求職者にとってより良い会社をつくるために、利用できる補助金や助成金があれば、積極的に活用しましょう。

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